住宅の耐久性について考えてみる
日本の家は耐久性が無いとよく言われます。
20年~30年で建て替えられているという現実があり
そういう印象がありますね。
ただ、本当のところは耐久性が無いというよりは
対応性が無いと言ったところが多いのではないでしょうか?
大きな家を建てたが老後は2人になり建て替えた。
その当時は断熱など考えずに建てて今は寒さが堪えるので建て替えた。
今の暮らしに合わないので建て替えるという事が多いのです。
決して耐久性自体がないのではありません。
しかし例外もあります。
そのあたりを今日はみてみましょう。
まず、材料にはそれぞれ、天敵が存在します。
木材は、腐朽菌やシロアリ。
鉄筋コンクリートは、空気中の酸による中性化。
鋼材は、鉄が酸素などと結合して錆(二酸化鉄)が発生すること。
どれも材料を短命にしてしまう天敵です。
木造住宅の耐久性を例にとってみましょう。
土台は建物の基本ですから、「ヒバ材やヒノキでないとダメ。」
という人がいます。
それはそれで正しいのですが、では土台だけに注意していればいいの
でしょうか?
答えはNOです。
軸組工法、2X4工法に限らず、木材を構造材としてつかった木造の建物
の耐久性は、必ずしも良い木材を使ったから丈夫で長持ちをする。
といったものではありません。
木材が腐っていく原因のほとんどは湿気による木材腐朽菌やシロアリといっ
た外部からの被害によるものです。
そのため、建物を長持ちさせるためには、木材が適正な環境に置かれておく
必要があります。
- 土台
土台は地面に近くもっとも腐りやすい部分です。
現在使われている材料は、防腐剤を加圧注入した米ツガ。
あるいは耐久性の高いヒバやヒノキなどを土台の材料として使う場合が多く、
その中でも“芯持ち材”と言われる木材の中心を利用した部分は、
同じ木材でも、もっとも耐久性が高いと言われています。
しかし、ヒバやヒノキが良いと言っても、
床下換気や防湿など他の要素もキッチリしないと、宝の持ち腐れになってし
まいます。
- 床下防湿、床下換気
いくら良い土台をつかっても、床下が湿気ていたり換気がされていなければ、
湿気が滞留し、土台などはいつもジメジメした環境の中で
次第に腐朽菌にむしばまれ腐っていきます。
そうならないためには、床下を常に乾燥させておくことです。
床下換気やべた基礎、あるいは防湿コンクリートを打設するなどの床下の防湿対策は、
木材を腐らせないために必ず必要な対策です。
基礎断熱の場合は床下換気は必要ありません。
外の湿気た空気を入れないという考え方です。
床下を換気させて乾燥させる工法、換気させないで乾燥させる工法
それぞれ一長一短あるようです。
- 小屋裏換気、外壁通気工法
小屋裏換気は、夏は異常な熱気となる小屋裏を適度に換気し、
木材が異常に乾燥して収縮するのを防ぎ、直下の部屋の断熱効果にも寄与する
働きを持っています。
ただ、現在では、小屋裏を換気させる工法より垂木間を通気させる棟換気の方が
効率よく換気できるようです。
また外壁通気工法は、構造体内部の湿気を外部に放出する仕組みになっており、
構造体内部の結露を防ぎ、木材をいつまでも適度な乾燥状態にしておくことがで
きる工法です。
これら2つの方法は、建設基準法では規定されていません。
法的義務のあるものではありませんが、
建物の劣化を防ぎ、長持ちさせるために、できれば採用したい仕組みや工法です。
- 土台の樹種別の推定耐用年数
木材の防腐処理には2つあります。
土台の木材に直接防腐剤を注入する加圧注入という方法と、
現場で防腐剤を塗布する現場塗布です。
土台の耐用年数は、芯持材のヒバやヒノキといった材料を使うと、もっとも安価なうえ、
ポピュラーな米ツガの現場塗布に比べて、倍程度の耐用年数があるとされています。
では米ヒバの芯持ち材を使い、加圧注入をすると、土台はもっとも長持ちしそうですね。
もっとも多く使われている米ツガは、
樹種が柔らかいため、加圧注入も効果的に浸透しますが、
堅い樹種ほど木材の中まで浸透しにくくなります。
現実に堅い米ヒバに加圧注入をしても、木材の表面にしか注入できません。
また、米ヒバやヒノキの芯持ち材を使う場合は、
環境やシックハウスへのこだわりから
防腐剤の現場塗布をすることもあまり行われていないのです。
では杭に使われる木材はどうでしょう。
土の中に埋没する木杭の実験結果ですが、
同じヒノキを使ってでも、何も処理しなければ2年前後で腐ります。
ヒノキにクレオソート(木の防腐剤)などを塗れば、その耐用年数は4年程度で、
さらに加圧注入をすれば、7年以上の耐用年数があると報告されています。
土台に使われるヒノキ、杭に利用されるヒノキ。
それぞれ樹種は同じですが、使われる用途や環境、防腐剤の有無によって、
耐用年数は大きく変わってきます。
また、別の側面で考えれば、いくら土台だけ良い木材を使っても、
それ以外の柱などの木材が腐ってくれば、建物は長持ちしません。
つまり、建物の耐久性は、土台に限らないということです。
木造住宅の場合は、木材を湿気させない。
そして、いろいろな対策を総合的に考えておく必要があります。
- 鉄骨造は錆対策
鋼材の天敵は空気中の酸素です。
酸素によって鉄は錆ていきます。
そのため、鉄骨造の建物を長持ちさせるためには、錆対策が欠かせません。
なお、品確法ではそれ以外に、床下換気と小屋裏換気が必要とされています。
RC造は、中性化対策
コンクリートは皆さんが思われているほど簡単な材料ではなく、
木材や鉄と比べても、もっとも扱いの難しい材料です。
鉄筋コンクリートは、出来た当初は100年は大丈夫といわれていたものですが、
現実にマンションなどの寿命は50年程度が実質的な寿命といわれています。
その中でも鉄筋の耐久性に大きな影響を与える「かぶり厚」が大きな問題となり
ます。
かぶり厚とは、鉄筋を覆うコンクリートの厚さのことです。
アルカリ性のコンクリートは鉄筋が錆びるのを防いでくれますが、
外気の炭酸ガスなどの影響で次第にコンクリートが中性化していきます。
中性化が中の鉄筋にまで進み、ひび割れから水分が入り込むと鉄が錆び、
耐久性が落ちてしまうのです。
つまりかぶり厚さが大きいほど、鉄筋は錆びにくく、耐久性は高くなるというわけです。
ですから、かぶり厚と同時に重要なのが、コンクリートの中性化のスピードを遅らせる
「水セメント比」です。
品確法では、コンクリートの中性化スピードを遅らせる対策が示されています。
強いコンクリートを打てばいい。
と考えているのは大きな間違いですよ。
いろいろな構造、材料がありますが、耐久性を長く確保するために共通するポイント
もあります。
それは水分です。
水分とは、屋根・窓・壁からの雨漏れ、そして配給水設備部分からの水漏れ。
そして忘れてはいけないのが、湿気と壁内結露ですね。
断熱と気密を一緒に考えることが、耐久性を高めるためには重要なことなのです。
使用する建築材料の特徴をよく理解しておくこと。
材料にも工法にも、それぞれ長所と短所があるのです。
いかがでしたか?
家を建てる時はついつい耐久性に目が行きがちですが、対応性も
大事な要素です。
10年後はどのような家族構成か?
30年後はこの家でどのような暮しをしたいか?
そのあたりも含め家づくりを考えたらいいかと思いますよ。
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