高断熱高気密住宅の結露 日経ホームビルダーより引用

日経ホームビルダーより引用

結露が発生しやすい季節だ。結露というと窓や壁の表面結露に目がいきがちだが、小屋裏の野地板は高断熱・高気密住宅で結露のトラブルが比較的多い、注意を要する部位だ。結露が長期間続くと野地板の腐朽につながるので、この季節に小屋裏の点検を実施したい。

 寒冷地に建つ屋根断熱の住宅Aでは、築半年後の冬に野地板の結露が発見された。屋根の断熱材を剥がすと野地板がびっしょりぬれて、結露水が天井を通過して床に落ちていた。

築半年後の住宅Aで、北面の断熱材を外した状態。野地板がびっしょり結露でぬれていた
(写真/文章:日経ホームビルダー)
住宅Aで断熱材を留めていたくぎ。わずか半年でさびが発生していた(写真:日経ホームビルダー)

 同じく寒冷地に建つ天井断熱の住宅Bでは、塗装して間もない軒天井の染みと剥がれを住まい手が見つけた。

 住宅の販売会社に不具合の調査を頼まれた住まい環境プランニング(岩手県滝沢市)が小屋裏を点検すると、野地板と天井断熱材のセルローズファイバーが結露でぬれて、カビが生えているのを確認した。

天井断熱材のセルローズファイバーと野地合板がぬれていた住宅Bの小屋裏。セルローズファイバーが軒桁までかぶさり、給気口からの換気経路を塞いでいた。第三種換気のダクトも途中で外れていた(写真:住まい環境プランニング)
住宅Bの軒天井材に発生した染みと剥がれ。塗装して1年以内に住まい手が見つけた。結露に気付くきっかけとなった(写真:住まい環境プランニング)

 野地板が結露した住宅Aと住宅Bに、共通する原因の1つは換気不足だ。

 住宅Aは、小屋裏の妻側に軒裏換気口を設けているだけだった。住宅Bも、四隅の軒裏換気口と妻側の片方に換気ガラリがあるだけで、妻側の反対側の換気ガラリを設けていなかった。

 住まい環境プランニングの古川繁宏社長は、「妻側の換気口だけでは通気量が限られ、換気効果を期待できない。屋根の平(ひら)側と棟に換気口を設けて換気量を増やす必要がある。野地板が結露している住宅では、換気不足が発生していることが多い」と説明する。

 

 

壁内に生じる結露は、湿気を含んだ空気の流れがカギを握る。外からの湿気が侵入していないか、室内側の防湿層は切れていないか。壁内結露を防ぐために、施工時にこの2点は必ず確認しておきたい。

上の写真は、室内に生じたカビの様子。ビニールクロスにうっすらと黒いカビが浮かび上がっている。建て主によると、引き渡し当初からカビは発生していたという。右の写真は、カビが生じていた壁を剥がして、石こうボードの裏面を確認した様子。黒いカビが発生していた(写真:カノム)

 上の写真は、木造住宅の壁クロスに発生したカビの状況を撮影したものだ。建て主は約8年間、このカビに悩まされ続けてきた。

 建て主によると、引き渡しの年からカビが発生していたという。そのため、住宅を建築した工務店に無償での修理を依頼した。だが、「壁内結露が原因で生じたカビだ。結露は瑕疵ではないので修理に応じられない」と断られてしまった。

 カビの状態が年々ひどくなったことから、建て主は知り合いの工務店に調査を依頼した。その工務店は「結露ではなく雨漏りだ」と判断。結露か雨漏りか…。さらなる判定を求め、私のところに相談が舞い込んできた。

 建て主にさらに話を聞いたところ、次のようなことが分かった。一つは、カビ臭がひどくなるのは梅雨時から夏場にかけてということ。もう一つは、エアコンを1日中入れている2階の部屋のクロスにカビが多く発生しているということだ。

 これによく似た現象が現れるものがある。夏場に壁内で起こる結露、いわゆる夏型結露だ。壁内の湿度が高い状態で、防湿層に施工ミスがあり、さらに、室内側の壁(石こうボード)の表面がエアコンなどで冷やされた空気に触れるといった条件が重なると、結露やカビが発生する。

壁内結露のイメージ
室外側から侵入した湿気が断熱材や防湿層の隙間を通って室内側に到達。室内側の冷たい空気の影響で、石こうボードの裏に結露が生じる

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